2013年9月7日土曜日

不良のOと普通の僕

個人用の携帯を久しぶりに見たら
中学時代の友人Oから何件か着信が入っていた。
Oは学校でも有名な『不良』で、そしてなぜかタイプの違う僕と気が合った。
Oが悪さを繰り返して親と大喧嘩をして家出をした時も、
僕の所にだけは電話をしてきた。
「横須賀に居る」とかふざけたこと(笑)言うので、
「とにかく早く帰ってこい!」と怒ったのを覚えている。
翌日、Oはちゃんと帰ってきた。

高校になるとOと僕は隣同士の別の高校へ進学した。
2年の時だったか友人が、
「××高校通る時さ、すっげえ恐いヤツいるんだよ。前通るの嫌なんだよな」と言っていた。
何か悪い予感がしたのだが、
「サイトーと同じ中学だよ。背が小さくて見るからに恐いヤツ。知ってる?」
間違いなくOだと思ったが、「知らない」と返した。
中学時代の一番の仲良しと言っても、
Oと僕の関係を理解してもらうのは難しいと思った。

高校を卒業すると、Oは中学時代のように時々僕の家に顔を出すようになった。
なぜか母親の「受け」が良く、
僕が玄関に行こうとすると二人で笑って話したりしている。
ここまでは良いのだが、いつもその後が悪い。
「車を買ったから見せに来た」と言うから出てみれば下品な改造車で、
「ウイング付けたいんだけど加工が分からないんだ。手伝ってくれよ」と言う。
「ヤダね!」
「カッコ良くなったらヤスシ(僕の事)も乗せるからさあ」
「い、や、だ!」
とかそんなパターン。
数か月後に来た時は「今度はマジメな車だから」と言うので出て行ったら、
離れたところに止めてあると言う。
大通りに出るとド派手な10t車だった。
「ドライブいこうよ!」
「行かない(即答)」
3回目はそのまた数か月後で、今度は紫メタリックのシャコタンだった。
しかも見知らぬ男性の同乗者あり。
「友達?」
「あ~コイツ?俺の舎弟」
「シャテイ?年下?」
「高校の同級生」
「あの~君さ、コイツと居るとロクなことにならんから止めといたほうが…」と
冗談交じりに言った瞬間、彼は俺にグンと近づいてからOを見た。
「コイツ、やっちゃってイイすか?」って意味らしい。
彼からすれば、僕みたいな人間がOを茶化すような事を言うのが許せないらしい。
まあ、それは僕も理解できる。
僕自身もなんで僕らがこんな関係になったのかさっぱり分からないし。
結局、この不思議な3人はドライブに行くことになり、
途中でパンクして駄菓子屋さんのおばちゃんに「大変ねえ」と心配されるというオチで、
僕はもう一度、シャテイ君に
「だから言ったろ。コイツと居るとホントにロクな事に…」と言ってみたが、
やっぱり彼はグン!と近づいてきて、
僕とOとの関係は、やっぱりそれ以外の人には成立しないんだと妙に確信した。

2年ほど前にOが来たのは同窓会の誘いだった。
「やっぱりさ、大学出て東京とか横浜とかでちゃんと働いてるヤツは忙しいんだし、
俺らみたいなヤツがさ、皆が集まれるようにしてやるべきだと思うんだよ」と、
ちょっとグッとくる事を言っていたけど、
「俺らって言うな!」といつものようにツッコミを入れ、
Oもいつものように笑いながら「ワリ~ワリ~」と謝っていた。
だけど、あのOが色々な人に連絡を取って頑張っているのは知っていたので、
「絶対行くよ」と答えた。
当日Oは、「幹事だし、酔った奴は車で送って行くから」と一滴も酒を飲まずにいた。
僕は隣でずっと気になったことを聞いてみた。
「なあ、Oってさ、なんでよく俺のトコ来たの?」
答えはとっても意外なことだった。
宝物にしているので、ここでは書かない。

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